眼精疲労の患者さんが目の不調と同時に、耳にも不調が現れる場合が少なくありません。 例えば、目が疲れると、耳の閉塞感が生じて、めまいや耳鳴りが強くなという症状です。一方、低音性感音難聴やメニエール、原因不明の眩暈を生じている患者さんが、耳の調子が悪くなると、目も酷く疲れるといったことがよくあります.当院では、このような症状を「目と耳の相互不調」と言っています。
特に多いのが、ひどい眼精疲労から生じる「浮遊性のめまい」です。。 そのため、当院では「目の鍼治療」と「耳の鍼治療」を同時に行う、目と耳の相互治療(コンビネーション治療)を行うようにしています。
目と耳の連携性を支えてるは首
身体機能的にも、目と耳は連動しています。例えば聴覚においては、大きな音が聞こえた時、瞬時に眼球が反応して目標をとらえようとします。また、三半規管は、身体の平衡感覚を検知して、目に入る映像がブレないよう、目の位置や動きを自動的に調整します。これは小脳とも連携して実に複雑な働きをしています。めまいの中には、眼振(がんしん)が起こることで、地面が揺れて感じたり、天井が回転するように見えるものもあります。このように、目と耳は、常に連動して身体機能を保持しているのです。
ただ、目が疲れると耳に症状が出る、また耳が疲れると目に症状が出るという状態は、もう少し複雑な要因が絡んでいます。 それは、「目・耳・首」という三角関係です。実際に、後頚部への強いマッサージや鍼刺激によって「眼振」が起こり「めまいの症状」が誘発される場合があります。つまり、首への負荷が眼球運動に変調が生じ、めまいが起こるという病態が存在するのです。
目と耳をつなぐ首の役割
ここでは、目と耳をつなぐ首の機能について解説していきます。耳や目を含めたすべての臓器は血流(血液)によって維持されています。ですから血流が弱まり不足すると、その臓器の機能は低下してしまいます。心臓から出た血液は「首」を通って目や耳や脳に送られます。首には2本の重要な動脈があります。1つは頸動脈(けいどうみゃく)で頭蓋の中に入った動脈は一部が分岐して「眼球」に接続しています。もう一つは椎骨動脈(ついこつどうみゃく)で頸椎(首の骨)にあるトンネルを通って頭蓋の中に入り一部が分岐して聴覚器に接続しています。
(1) 頸動脈→眼動脈→眼球
(2) 椎骨動脈→脳底動脈→迷路動脈→感覚器
さらに、重要なのがそれぞれの血管に分布する神経で、血管の血流量は神経による調整も受けています。それが、頸動脈の星状神経節を中心とする前頚部交感神経叢、また椎骨動脈起始部神経叢です。そして重要なのが、この二つの神経がネットワークを築き、連絡を取り合って、各部位の筋収縮や血管収縮を調整しています。 かなり難しい内容ですが、つまり目と耳は首にある神経ネットワークによって血流などが管理されているということです。その管理者はもちろん脳ですが。
逆に言うと、首を痛めると目や耳にも不具合が出ますし、目や耳が疲れると首に負荷がかかります。まさに目・耳・首は三位一体といえます。
眼精疲労性めまい(視覚性めまい)
椎骨脳底動脈不全性めまい
当院は「難聴めまいの専門治療」を行っているため、原因不明のめまいを主訴に治療を受ける患者さんも多いです。
めまいの原因は大まかに
1、脳梗塞などで起こる危険なめまい
2、メニエール病など内耳の浮腫みによるめまい
3、耳石などが原因で起こる良性頭位性めまい
4、前庭神経炎などを契機として起こるめまい
5、ストレスや自律神経失調に由来するめまい
そして、当院では比較的治療例の多い「椎骨脳底動脈不全性のめまい」などが挙げられます。近年、首と「めまい」の関連性に関する臨床研究も進み、「頚性めまい」という疾患概念が確立されつつあります。そこで今回は、椎骨脳底動脈不全症について解説します。
6.椎骨脳底動脈不全性のめまいとは?
症状は重く、回転性の「めまい」や浮遊性の「めまい」が長期間続き、吐き気などで食欲も減退し、日常生活に支障を来します。
また、首を一定方向へ捻る、傾けるなどの動作で、めまいが誘発されることもあります。病院で様々な検査を受けても原因がわからず、めまい止めやイソバイドなどの治療でも改善しない、難治性のめまいです。
そして、特に頸椎(首)に異常や疾患がある場合は、椎骨脳底動脈不全性のめまいが疑われます。原因としては、変形性頚椎症、頸部ヘルニア、後縦靭帯骨化症、ストレートネック、または重度の首や肩のこり、などが挙げられます。
椎骨・脳底動脈とは
心臓から出た血液は首を通り脳や感覚器へと送られます。首には主に「椎骨動脈」と「頸動脈」があります。このうち耳と大きく関係するのが椎骨動脈です。椎骨動脈は、連なる頸椎が形成する骨のトンネル(横突孔)を経路としています。
首の後部から頭蓋内に入ると左右の椎骨動脈は一旦、合流して1本の脳底動脈と名前を変えます。この合流地点の直ぐ先に左右に分岐する迷路動脈があり、これら左右の血管を通り内耳(三半規管)に血液が到達します。また、椎骨動脈・脳底動脈から、前・後小脳動脈という小脳へとつながる動脈が伸びています。
構造的に椎骨動脈が頸椎に強く圧迫されると、内耳や小脳への血流が不足してしまうという現象が起こる場合があります。
また、椎骨動脈の内空が動脈硬化により狭くなる場合も同様です。
つまり、椎骨脳底動脈不全性のめまいとは、内耳三半規管や小脳(身体のバランス保持や運動をつかさどる器官)への血流が一時的に不足し、その機能が低下することで起こる「めまい」ということになります。
不全という言葉はいささか重症さを感じますが、血流量の低下といったニアンスで良いと思います。最近では、椎骨脳底動脈不全性のめまいの重症例に対して頸椎を削る外科手術が行われる場合もあるようです。
当院では、鍼治療や頸椎徒手矯正による治療を行っており、著名な改善例もあります。首には基幹血管の他、頸神経、自律神経などの神経系の異常に伴って難聴・耳鳴り・めまいを起こすこともあります。首の不調と「めまい 難聴 耳鳴り」がリンクしていると感じている方は是非一度ご相談ください。
前の投稿へ